ChatGPTに「任せてはいけない」作業リスト:安全な使い分けと運用ルール【2025年版】
公開日: 2025-11-18 / 更新日: 2025-11-18
AI運用安全性実務
この記事のゴール
AIに頼らないほうがいい作業を明確にし、現実的な「併用の作法」を用意すること。
結論:高リスク領域は“任せない”、低〜中リスクは“下書きとして使い、人間が確定”。その線引きを具体的に示します。
目次
まずは結論:AIに任せない10カテゴリ /
なぜ危険?よくある失敗パターン /
安全な使い分け(運用ルール) /
すぐ使えるテンプレ /
FAQ /
まとめ
まずは結論:AIに任せない10カテゴリ
| カテゴリ | 任せない理由 | AIの使い所(あるなら) |
| ① 法務・契約・規約の最終案 | 条文の解釈ズレ/法域差/最新改正の反映漏れ | ドラフト骨子作成、条文比較の観点出し |
| ② 医療・健康・投薬アドバイス | 誤情報の致命傷リスク、個別事情の考慮が不可 | 病院で医師に聞くための質問整理 |
| ③ 投資・税務・保険の意思決定 | 規制・税制の頻繁な改定、責任の所在不明 | 比較表の項目出し、用語解説 |
| ④ セキュリティ設計・鍵/秘密情報の扱い | 秘匿情報の漏えい/誤設定の連鎖事故 | チェックリスト作成、ベストプラクティスの要約 |
| ⑤ 本番データの変換・削除・移行の自動実行 | 不可逆処理の誤操作リスクが高い | プレイブックの下書き、ドライランの観点出し |
| ⑥ 研究・統計の“新事実”断定 | 一次情報への当たり不足、引用の混線 | 関連論点のブレスト、既知の概念整理 |
| ⑦ 事故・障害の公式アナウンス最終文 | 法務/広報/CS整合が必須、表現の一語が火種 | 初期ドラフト、ステークホルダー別トーン案 |
| ⑧ 人事・評価・採否の判断 | バイアス・差別の懸念、個別事情の重み | 評価観点の定義、行動事実の要約 |
| ⑨ 学位・資格等の本人課題の直接回答 | 学習評価を歪める/規約違反 | 方針・ヒント・模範解答の構成例 |
| ⑩ 著作権グレーの“元ネタ当て”コンテンツ | トレーニング由来の近似生成や権利侵害の懸念 | オリジナル企画のブレスト、構成テンプレ |
共通原則:人命・金・信用に直接効く領域は「任せない」。使うなら下書きに限定し、最終判断は人間が行う。
なぜ危険?よくある失敗パターン
- もっともらしい誤情報(ハルシネーション):実在しない規則・論文・仕様をそれっぽく提示。
- 最新性の欠落:日付の誤認、改定の未反映。相手サービスのUIも頻繁に変わる。
- 暗黙条件の取りこぼし:利害関係者・監査・地域ルールなど、前提が省略されがち。
- 境界の越境:秘密情報やPII(個人情報)をプロンプトに貼り付けるミス。
- 責任の所在が宙に浮く:「AIが言った」では済まない。監督責任は常に人間側。
安全な使い分け(運用ルール)
RGRフレームワーク(Role / Grounding / Rules)
- Role:役割を限定
- 「あなたは下書き支援のアシスタント。最終判断は人間」という前提を明示。
- Grounding:根拠を紐づけ
- 一次情報のURL/規程/社内文書の範囲に限定し、出典を必須にする。
- Rules:守るべき規則
- PII秘匿・日付の明記・不確実な箇所は「保留(要確認)」のタグをつける等。
ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)最小セット
- ドラフトの目的確認(誰に/何を/いつまでに)。
- 出典チェック(一次情報5点ルール:日付・発行主体・適用範囲・改定履歴・原文リンク)。
- リスク判定(人命・金・信用に直結? → AIは下書きのみ)。
- 最終レビュー(責任者がサインオフ)。
- 変更ログ(いつ・誰が・何を変えたか)。
AIを使ってよいケース/避けるケース
| OK(推奨) | NG(避ける) |
| 文章のたたき台、見出しの候補、要約、言い換え | 規約・契約の最終文、社外公式発表 |
| コードの雛形、テストケースのアイデア出し | 本番DBに直接作用するスクリプトの生成と即実行 |
| 比較観点の列挙、チェックリスト草案 | 医療/税務/法務の断定的判断 |
| 学習教材の構成、練習問題の作成 | 本人評価・採否・試験の回答作成 |
すぐ使えるテンプレ
① プロンプトの雛形(下書き支援モード)
【役割】あなたは下書き支援のアシスタント。最終判断は人間が行います。
【目的】<目的>
【対象】<読者/ステークホルダー>
【制約】日付は必ずYYYY-MM-DDで明記。断定を避け、根拠URLを各節末に列挙。
【安全】個人情報・秘密情報は出さない。曖昧な点は [要確認] と明示。
【出力】見出し案3つ+本文ドラフト(800〜1200字)、最後に出典候補リンク。
② リスク確認チェックリスト(保存推奨)
- [ ] 人命・金・信用に直結しないか?(直結ならAIは下書きのみ)
- [ ] 出典は一次情報か?(発行主体・日付・適用範囲が確認できるか)
- [ ] 改定の可能性が高い分野か?(高い場合は日付を本文に明記)
- [ ] 秘密・個人情報が混じっていないか?(プロンプト・出力ともに)
- [ ] 責任者レビュー(サインオフ)は済んだか?
③ 公式アナウンスのドラフト→最終の運び方
- AIで「構成のみ」を作る(時系列・対象範囲・再発防止)。
- 社内関係者で事実確認 → 数字・日時を確定。
- 法務・広報・CSの観点レビュー。
- 最終文は人間がリライト→リスク語を調整(断定/謝罪/補償)。
- 公開後はQ&Aを随時追加(AIの提案は採否を明記して記録)。
具体例:この用途は“下書きまで”
ケース1:セキュリティ運用文書
AIに「運用項目の洗い出し」まで頼み、人間が環境固有の設定値・責任分担・復旧SLOを確定。公開版は監査と整合。
ケース2:本番データ移行の手順書
AIでプレイブックの骨子→ドライランで実測値を埋める(件数・所要時間・ロールバック手順)。実行権限は人間のみ。
ケース3:契約の条項レビュー
AIに「不利になり得る観点」を列挙させ、条文は必ず人間の法務が修正。改正法は日付で追う。
FAQ
Q. AIの回答に出典が付いていれば信用していい?
出典の文脈と日付を必ず照合。リンク切れや“似て非なる文書”の引用も多い。5点チェック(発行主体/日付/適用範囲/改定履歴/原文)を習慣化。
Q. クリエイティブ制作はどう扱う?
参考案や構成まで。最終はオリジナル表現に落とし込む。近似生成や権利者のスタイル模倣は避ける。
Q. 社内の機密を使ってもいい?
プロンプト/出力にPIIや秘匿情報を入れないのが原則。必要なら社内閉域のモデルを使い、ログ保存の有無を明確に。
まとめ
要点
・人命・金・信用に直結する領域は「任せない」。
・それ以外は「下書きとして活用 → 人間が確定」。
・RGRとHITLで、出典・日付・責任の線を明確にする。
・“戻れる設計”にしておけば、AIは強力な加速装置になる。